授与所まであと数メートルというところで、足が止まったことはありませんか。
手にはどのお守りを受けたいか、もう決まっています。なのに、いざ窓口の前に立つと最初の一言が出てこない。「これください」でいいのか、「お守りを買いたいんですけど」は失礼にあたるのか。
連れに「神社で『買う』はちょっと」と耳打ちされて、余計に固まってしまった人もいるかもしれません。
先に答えを言ってしまうと、神社での正しい言い方は「受ける」「授かる」「いただく」です。お守りを買うのではなく、お金は初穂料として納め、数えるときは1体、お守りが並ぶ場所は授与所と呼びます。
けれど本当に困るのは、単語そのものより「窓口で何と声をかけるか」という部分です。
この記事では、そのまま口に出せる一言を場面別に用意したうえで、もし「買いたいんですけど」と言ってしまったあとの受け止められ方まで、神社本庁や神社の公式ページの記述を確認しながら整理しました。
お守りを買うときの言い方は「受ける」「授かる」「いただく」
神社でお守りを求めるときは、「買う」ではなく「受ける」「授かる」「いただく」と言うのが基本です。参拝者側が使う言葉と、神社側が使う言葉は少し違います。
参拝者が使う言い方|受ける・いただく・授かる・拝受する・賜る
一番よく使われるのは「受ける」です。次に「いただく」、少しあらたまった場では「授かる」も自然です。「拝受する」「賜る」はさらに丁寧な響きがあり、書き言葉やお礼状で使われることが多い言葉です。
日常の窓口でここまで畏まる必要はなく、「受ける」「いただく」の2つを覚えておけば困りません。
神社の側が使う言い方|授ける・分かつ・頒布する・授与する
神社の案内板や公式サイトを見ていると、「授ける」「分かつ」「頒布する」「授与する」という言葉が使われているのに気づきます。実際、神社本庁「お神札、お守り」ページでも、お守りは「受ける」もの、「頒布される」ものとして説明されています。参拝者が受け取る側、神社が渡す側という関係が、そのまま言葉の使い分けになっているわけです。
「買う」「売る」が避けられる理由
お守りは商品ではなく、神さまのご加護を分けていただくものという考え方があるため、「買う」「売る」という言葉は避けられます。東京・牛込総鎮守の赤城神社が公式に出しているお知らせでは、
参拝者側の言葉として「いただく、拝受する、受ける」、
神社側の言葉として「授ける、分かつ、頒布する」
を挙げたうえで、「売買・販売は不適切」だとはっきり書かれています。神社が自分の言葉でここまで説明している例は貴重で、この記事でも軸になる一次資料です。
つむぎ所長授与所の看板に「頒布」って書いてあるの、最初は難しい字だなと思ったんですが、神社側からするとちゃんと理由のある言葉なんですよね
お神札・おみくじ・御朱印の言い方の違い
同じ授与所で扱う授与品でも、言い方は少しずつ違います。お神札(御神札)は「受ける」、おみくじは「引く」または「受ける」、御朱印は「いただく」「拝受する」が一般的です。細かい違いはありますが、「買う」を避けて「受ける」「いただく」を軸にすれば、どれにもだいたい通じます。

授与所で使えるお守りの言い方|場面別フレーズ
単語が分かっても、実際に声に出すとなると迷うものです。ここでは、授与所でそのまま使える一言を場面別にまとめました。
お守りを1体だけ受けるときの一言
「こちらのお守りを一体、お願いできますか」で十分です。
指をさしながらでもかまいません。神職や巫女は接客業の店員ではないので、「すみません」より「恐れ入ります」のほうが場になじみますが、「すみません」でも失礼にはあたりません。
家族や友人の分も複数受けるときの伝え方
「こちらを二体お願いします」のように、体数を添えれば伝わります。
複数の種類を受けたい場合は、「こちらとこちらを一体ずつお願いします」と指させば伝わります。複数のお守りを一緒に持つことについて、神さま同士が喧嘩するといった心配は要りません。
初穂料が書かれていないときの聞き方
値札が出ていない小さな神社もあります。そのときは「こちらの初穂料はおいくらですか」と聞けば通じます。「値段」「料金」ではなく「初穂料」という言葉を使うだけで、ぐっと自然になります。
お神札・おみくじ・御朱印も一緒に受けるときの順番
複数の授与品をまとめて受けたいときは、「お守りとお神札を一体ずつ、それとおみくじもお願いします」のように、欲しいものを一度に伝えると窓口の負担も減ります。
御朱印は書いていただくのに時間がかかることが多いため、先に御朱印帳を預けてから他の授与品を受ける、という順番にしている神社もあります。
授与所に人がいないときの声のかけ方
窓口に誰もいない、呼び鈴だけが置かれている、ということもあります。その場合は「恐れ入ります」と声をかけながら呼び鈴を押せば大丈夫です。
しばらく待っても応答がないときは、社務所の入り口から「すみません、お守りをいただきたいのですが」と声をかけてみてください。


「買う」と言ってしまったときの受け止められ方
すでに「お守りを買いたいんですけど」と言ってしまった人、連れに「それは違うよ」と指摘されて気まずくなった人もいると思います。
結論から言うと、それだけでお守りの効果が変わることはありません。
罰が当たる・ご利益が消えるという話の裏づけ
「買うと言うと罰が当たる」「ご利益が消える」という話がネット上にはありますが、これは【俗説】です。神社側の教義としてこうした話を裏づける記述は見当たりません。
神社が言い方を案内する理由
それでも神社側が言い方を案内するのは、お守りが商品ではなく、神さまのご加護を分けていただくものだという考え方があるからです。赤城神社の「売買・販売は不適切」という表現も、参拝者を咎める意味ではなく、神社側の姿勢を示したものと読むのが自然です。ここには言霊(言葉に宿るとされる力)という発想も関わっています。
言ってしまったあとにできること
一度「買いたい」と言ってしまっても、取り返しはつきます。次からは「受ける」「いただく」と言い換えればいいだけですし、お守りを受け取るときに軽く一礼を添えれば、それで十分です。
つむぎ所長言葉は大事だけど、一度言い方を間違えたくらいでご利益が消えるほど、神さまは厳しくないと思うんですよね。次から気をつければいいだけです
お守りの初穂料という言い方とお釣り・のし袋の扱い
お守りを受けるときのお金は、値段や料金ではなく初穂料(はつほりょう)と呼びます。ここでは、お金まわりで迷いやすい点を整理します。
初穂料・授与料という言い方と避けたい言葉
「値段」「料金」「代金」ではなく、「初穂料」または「授与料」という言葉を使います。「初穂料はおいくらですか」と聞けば、値段を尋ねているのだと自然に伝わります。
初穂料の由来
お金を渡すというより、感謝の気持ちを形にして納める、という発想が根っこにあるわけです。
のし袋・新札とご祈祷申し込みとの違い
初穂料のマナーを調べると、のし袋や新札の話がよく出てきます。ただしこれは、多くの場合ご祈祷を申し込む場面の話です。授与所でお守りを1体受けるだけなら、のし袋も新札も用意している人はまずいません。
神社本庁のページでも、のし袋の表書き「上」は、お神札やお守りなどの授与品を入れる袋の表書きとしても使われると紹介されています。授与所の窓口と、ご祈祷の受付は別の場面だと考えると、必要以上に身構えずにすみます。
| 場面 | 用意するものの目安 |
|---|---|
| 授与所でお守りを受けるとき | のし袋・新札は不要。初穂料をそのまま渡せば十分 |
| ご祈祷を申し込むとき | のし袋に入れ、新札を用意するのが丁寧とされる |
お釣りをめぐる考え方
「お気持ちを納めるものだからお釣りはおかしいのでは」と考える人もいますが、実務としては、多くの神社がお釣りを用意しています。とはいえ神社ごとに幅があり、小銭を用意しておくと双方にとって楽です。手元に大きな金額しかない場合は、無理をせず窓口で相談してかまいません。
お守りの数え方と「1体」という言い方
お守りは「1個」「1つ」ではなく、「1体」「2体」と数えます。数え方にも、お守りならではの理由があります。
1体・2体と数える理由
「1つください」でも通じる理由
とはいえ、「1つください」と言っても、神社側が咎めることはありません。数え方に自信がなければ、指で示しながら「これをお願いします」と伝えるだけでも十分に通じます。
お守りを受け取る場所の言い方|授与所と社務所の違い
お守りが並んでいる場所は「授与所」と呼びます。売り場や売店とは呼びません。
授与所という呼び方
「授与所」のほかに、「頒布所」「お札所」といった呼び方をする神社もありますが、意味は同じです。お守りやお神札、おみくじ、御朱印などの授与品をまとめて扱っている窓口を指します。
社務所との違い
「社務所」は神社の事務を行う建物のことで、規模の大きな神社では授与所と社務所が分かれています。一方、小さな神社では社務所の窓口がそのまま授与所を兼ねていることも珍しくありません。表示が「社務所」だけの神社では、そこに声をかければお守りを受けられます。
窓口が閉まっている・無人のときの対応
授与所の受付時間は、神社によって違います。大神神社(奈良)の公式サイトによると、授与所は午前9時から午後5時まで、冬期(12月から2月)は午後4時30分までとなっています。夜間や早朝は、拝殿への参拝はできても授与所だけ閉まっている、ということもあります。
お守りを受ける順番|参拝前と参拝後
お守りを受けるタイミングは、参拝を先に済ませてからというのが広く案内されている順番です。ただし、絶対に守らなければならない決まりというわけではありません。
参拝を先に済ませるのが基本とされる理由
拝殿で二礼二拍手一礼を行い、神さまへの挨拶を済ませてから授与所へ向かう、という順番です。お守りは参拝の証としていただくもの、という考え方に沿っています。
先に受けても差し支えない場合
初詣などで行列が読めないとき、授与所の受付時間が先に終わってしまいそうなとき、体調や同行者の都合があるときは、先にお守りを受けても差し支えありません。神社本庁の公式ページにも、参拝の前後どちらでお守りを受けるべきかという規定は見当たりません。
お守りだけを受けに行くときの考え方
お守りだけを受けに神社を訪れることもできます。なお、大安や一粒万倍日といった「日取り」の話は、参拝の前後という当日の順番とは別の観点なので、ここでは扱いません。

郵送・代理でお守りを受けるときの言い方
現地まで行けない、家族や友人に渡すためにまとめて受けたい、というときの言い方も見ておきましょう。
郵送で受けるときの言い方
電話や申込書で「郵送での授与をお願いできますか」と伝えれば、対応している神社であれば案内してもらえます。多くの場合、申込用紙に必要事項を記入し、初穂料と送付手数料を現金書留で送る、という手順になります。
郵送授与は神社によって対応が分かれる
郵送授与への対応は、神社によって大きく分かれます。大阪の少彦名神社では、申込用紙と初穂料、送付手数料を現金書留で送る形の郵送授与に対応していますが、開運日限定の授与品は郵送の対象外です。
一方、上野東照宮は授与も返納も郵送を一切受け付けていません。同じ「郵送授与」という言葉でも、神社によって正反対の対応があるということです。
人の分を代理で受けるときの一言
「友人の合格祈願に一体お願いします」のように、誰のために受けるのかを一言添えると伝わりやすくなります。
窓口で伝える内容は、これだけで十分です。
初穂料の金額や授与所の受付時間、郵送授与への対応は神社によって異なり、変更されることもあります。参拝前に各神社の公式サイトで最新情報を確認してください。
まとめ|お守りを買う言い方の要点
お守りを求めるときは、「買う」ではなく「受ける」「授かる」「いただく」。お金は「初穂料」、数えるときは「1体」、場所は「授与所」です。
- 参拝者側の言葉:受ける・いただく・授かる・拝受する・賜る
- 神社側の言葉:授ける・分かつ・頒布する・授与する
- お金:初穂料(値段・料金ではない)
- 数え方:1体・2体
- 場所:授与所(社務所が兼ねる神社もある)
言葉を間違えても、参拝そのものが台無しになるわけではありません。次から言い換えられれば、それで十分です。
※この記事の情報は2026年8月時点のものです。



